日本教育教育学会第30回大会のご案内

大会実行委員長挨拶

大会実行委員長 佐藤英二

9 月12 日(土)・13 日(日)の2 日間にわたり、明治大学において日本教師教育学会第30 回研究大会を開催いたします。当初は本学の和泉キャンパスにてみなさまをお待ちする予定でしたが、感染症のリスクを考慮し、大会サイトと発表要旨集録への掲載、およびZoomを用いたリアルタイムの発表の形で実施することになりました。

教師教育学会は、さまざまなディシプリンによる研究者と実践者が「教師教育をどうしたらよいか?」という関心のもとで集まった学会です。所属機関もさまざまで、養成している教員の学校種も多様です。教員以外の教育者の教育に関わる会員もいらっしゃいます。

 研究大会は、その背景の違いを超えて関心を共有し、自らの議論の暗黙の前提に気づき、他の文化圏の人にも通じるように自分の言葉を磨く場(メディア)です。そうであってほしいという思いも込めて、今回、大会テーマを「教師教育を原理的に問い直す」としました。違いがあることに目を奪われてそこで思考停止に陥ってしまう、ということを避け、その違いを包括する、より大きな理論的な地図を作る試みに参加したいということです。

そして、シンポジウムのテーマは、「教師教育を原理的に問い直す~教師を目指す学生が大学で学ぶべきことは何か?」としました。Zoom を用いたリアルタイム配信の形で行います。初めての試みではありますが、質問を受け付ける準備もしております。フロアーとの活発なやりとりを期待しています。

それでは、9月にお会いするのを楽しみにしています。

大会テーマ・趣旨

大会テーマ: 「教師教育を原理的に問い直す」

 この30年、教師教育はたびかさなる「改革」の波にもまれてきた。90年代の10年間は、国立大学の教員養成課程の学部定員が削減され、大学院の修士課程が拡充された。2001年の「今後の国立の教員養成系大学・学部の在り方に関する懇談会」(在り方懇)の報告書では、「モデル的な教員養成カリキュラムの作成」や「一般学部とは異なる教科専門科目の在り方」が提唱された。2006年の中教審答申では、教職大学院の設置、教員免許更新制の導入とともに、教職実践演習の義務化と教職課程の認定審査を強化する方針が打ち出された。その間、2004年には東京教師塾が開設されるなど、教師教育における教員採用主体の影響力が強まり、養成・採用・研修を一体化する方向性が強まった。そして2016年には教育公務員特例法・教育職員免許法・独立行政法人教員研修センター法が改正され、翌年の再課程認定において、教員養成のコアカリキュラムの導入や教育職員免許法上の科目区分の大括り化(教科に関する科目の再編)など、在り方懇の報告書の提案の多くが制度化された。この30年の「改革」の総仕上げが始まっているといってよい。

 この時代状況において、今回わたしたちは、「教師教育を原理的に問い直す」ことを大会テーマとして設定した。かならずしも確かでない根拠の下で性急に改革が進められ、目前の制度改変への適応が常に求められた結果、教師教育の在り方を構想する視座と知恵が失われ、視野狭窄に陥っていると考えるからである。

 「一般学部とは異なる教科専門科目の在り方」の探求は、一般教養における教養への接近の仕方とは異なる教師教育の教養の在り方を深める可能性を持ちながらも、それが科目区分の大括り化として制度化された際、学問を探求する経験を欠き、定型的な教え方のみに習熟した教師を生み出す危険性をはらんでいるのではないか。養成・採用・研修の一体化は、生涯にわたる教師の成長を支えることに資する一方で、学校現場の支配的な価値観を大学において相対化する契機を失わせる危険性を帯びているのではないか。国際学力比較調査の結果が教育改革に直結する現状は、事実命題(調査結果)と規範命題(改革)との境界を崩落させる重大な問題をはらんでいるのではないか。これらの問題は、質保証や説明責任というレトリックの政治性に関わる、すぐれて現代的な問題であり、教育の公共性をどのように構築していくかという原理的な問題でもある。

 以上の通り、矢継ぎ早に進められる教師教育の「改革」は、背後に吟味されない仮説を有している。<いま、ここ>の表面的な記述を超え、安易な処方箋のスケッチの繰り返しを超えるためにも、広い地図の中に<いま、ここ>を位置づける確かな学問的営為が求められているのである。

 そこで、「教師教育を原理的に問い直す」というテーマのもとで、公開シンポジウムを設定した。中心にある問いは、「教師を目指す学生が大学で学ぶべきことは何か」というものである。「教師を目指す学生が大学で学ぶべきこと」は、この30年間の「改革」、とりわけコアカリキュラムの設定によってある意味で明確にされたとも言えよう。しかし、改めてこの問いを原理的に問い直すことを通して、場当たり的な対応ではない、射程の広い教師教育の視野(地図)を得たいと考える。「原理的に問い直す」とは、例えば他の領域における知見との隠された意味のつながりを探索することである。研究・実践の方法や内容の表面的な違いを超え、同じ問いに対峙する者として、大学において教師を育てることの意味を探る場としたい。

開催概要

名称日本教師教育学会第30回研究大会
主催日本教師教育学会
会期2020年9月12日(土) ~ 13日(日)
会場オンライン開催

日本教育教育学会第30回大会実行委員会

  • 佐藤 英二 ・・・委員長
  • 伊藤 直樹 ・・・副委員長
  • 伊藤 貴昭 ・・・事務局長
  • 高野 和子
  • 関根 宏朗
  • 山下 達也
  • 藤井 剛 (以上、明治大学教職課程)

大会日程

※ 画像をクリックするとPDFで開きます

大会までのスケジュール

2020年4月1日 大会ホームページ公開
2020年4月15日 発表、参加申込開始
2020年5月31日 発表申込〆切
2020年7月31日 『発表要旨集録』原稿〆切
2020年8月上旬 大会プログラム閲覧開始(大会HP上)
2020年8月31日 会員の参加希望者の学会費(年会費)振り込み〆切
非会員の参加事前申込、振込〆切 (会員は当日まで参加申し込み可)
※非会員の参加事前申込、振込〆切は、8月31日に変更になりました。
(2020/8/3)
2020年9月5日 Zoom発表者によるリハーサル(Zoom発表予定者にメールで詳細通知)
2020年9月7日 全参加者申し込み者に、大会参加者限定サイトのURLをメールで通知
上記URLより『発表要旨集録』配布開始
2020年9月9日 Zoom発表者による配付資料提出〆切
2020年9月11日 研究倫理研究会(プレ研究会)
2020年9月12-13日 研究大会

託児について

託児は行いません。

研究大会災害等への対応について

研究大会時の災害等への対応については、以下のPDFファイルでご覧いただけます。

研究大会時の災害等への対応.pdf

連絡先

第30回大会実行委員会事務局

〒101-8301
東京都千代田区神田駿河台1-1
明治大学

E-mail: cnf@jsste.jp
※@は半角に置き換えてください